2022-01-18
30代の女性患者様は、来院される3ヵ月前に円形脱毛症を初発しました。そのころ大きなストレスを抱えていて、また、新型コロナのワクチン接種を、円形脱毛症発症の1ヵ月前と直前に受けていました。家族歴はなかったので、ワクチン接種とストレスが原因で起こった円形脱毛症と考えられました。皮膚科治療を受けるも、皮膚科医師が口ごもったような言い方しかしないので、これはダメだと直感して、皮膚科受診を中止しました。また、皮膚科を受診すると、ステロイドを注射されるのがいやで、当クリニックを受診されました。正解です。ステロイドは、その場しのぎの薬で、治療意義があるのは、緊急性の高い状況のみです。ステロイドは、副作用もあり、痛み痒みや発赤などの症状は抑えますが、根治的な治療薬ではありません。ヒトの体を鍋に例えると、病気の原因は、それを熱する炎のようなもので、ステロイドを始め、痛み止めやかゆみ止めは、病気の原因である炎を消すことはせず、沸騰した鍋にふたをするようなものです(図)。痛み止めやかゆみ止めは、IGF-1を急激に減少させて、炎を急に大きくする副作用がありますが(脱毛もこのうちの一つ)、ステロイドは、IGF-1をゆっくりと低下させるので、急に炎を大きくすることはないのですが、特有の重篤な副作用(図に示したもの)以外にも、子供の成長障害や骨粗しょう症などがでます。根治性がない薬なので、症状を取るだけの目的で、使い続ける必要があり、副作用が出っぱなしになります。しかし、唯一、ステロイド治療が有意義なのは、炎が強すぎて、生命の危険が生ずる緊急性の高い場合です。気管支喘息の発作重積状態や重症のアナフィラキシーショック、さらに急性の肺水腫などです。このような場合を除いてのステロイド治療は、病気を根治させるという意味では、百害あって一利なしです。この患者様の決断は正しかったのです。しかし、ワクチンの副作用、怖いですね。IGF-1を増やす治療を受けていると少ないのですが。